ルーティング
ルーティング
ルーティング関連
ルーティングテーブル
・経路情報の一覧表
・ルータはルーティングテーブルを参照してパケットを転送する
経路情報の情報源
・インターフェースに設定したIPアドレス
UP/UPになっているインターフェースのIPアドレスがルーティングテーブルに載る(コード:L)
UP/UPになっているインターフェースのネットワークアドレスがルーティングテーブルに載る(コード:C)
・スタティックルーティングによる手動設定
手動設定した経路情報がルーティングテーブルに載る(コード:S)
ただし、転送に使用するインターフェースがUP/UPになっていない場合は載らない
・ルーティングプロトコルによる動的な学習(OSPFなど)
ルーティングプロトコルによって学習した経路情報がルーティングテーブルに載る(コード:Oなど)
show ip routeの表示内容
・経路の情報源(L=自身に設定しているアドレス、C=直接接続、S=スタティックルーティング、D=EIGRP、O=OSPF、R=RIP)
・経路の宛先ネットワークとプレフィックス長
・[アドミニストレーティブディスタンス/メトリック]
・ネクストホップのIPアドレス
・この宛先にパケットを送信するための出力インターフェース
*IOSによっては、localが無いなど、表示が異なる場合もある
プレフィックス長
プレフィックス長はサブネットマスクによって固定されるサブネットのビット数(長さ)で、「ネットワークアドレス/ビット数」で表現される
例)192.168.1.0/26
「/26」の部分がプレフィックス長になり、26ビット目までがサブネットであることを表している
最適経路の選択基準
最適経路は以下の順で選択される
1.ロンゲストマッチ(最長一致)
2.AD値(アドミニストレーティブディスタンス値)
3.メトリック
ロンゲストマッチ
ロンゲストマッチは、ルーティングテーブルにある宛先ネットワークのうち、プレフィックス長がより長い(詳細な)経路を優先する規則
例)ルーティングテーブルに以下3つの経路があった場合
・経路1:0.0.0.0/0(デフォルトルート)
・経路2:172.16.0.0/16
・経路3:172.16.2.0/24
宛先「192.168.1.1」宛のパケットを受け取った場合、経路1にのみ該当するので経路1を使用する
宛先「172.16.1.1」宛のパケットを受け取った場合、経路1と経路2に該当しますが、ロンゲストマッチによって経路2を使用する
宛先「172.16.2.1」宛のパケットを受け取った場合、全ての経路に該当しますが、ロンゲストマッチによって経路3を使用する
AD値(値が低い方が信頼性が高い)
・AD値(アドミニストレーティブディスタンス値)は、ルーティングプロトコルに対する信頼性を表す値
・同一の宛先ネットワークに対する経路情報を複数のルーティングプロトコルで学習している場合は、AD値の低いルーティングプロトコルで学習した経路情報を使用する
経路学習方法一覧(AD値)
直接接続 0
スタティックルート 1
eBGP 20
内部EIGRP 90
OSPF 110
IS-IS 115
RIP 120
iBGP 200
Unknown 255
メトリック
・宛先までの距離を表す指標
・同一の宛先ネットワークに対する複数の経路情報を、1つのルーティングプロトコルで学習している場合は、メトリックの低い経路を使用する
・ルーティングプロトコルによりメトリックの算出に用いる情報が異なる
ルーティングプロトコルとメトリックの算出に用いる情報
・RIP
ホップ数=宛先に到達するまでに経由するルータの数
・OSPF
コスト=基準帯域幅(Mbps)÷インターフェースの帯域幅(Mbps)
*基準帯域幅のデフォルトは100Mbps
・EIGRP
複合メトリック=(帯域幅+遅延)×256
*帯域幅=10,000÷経路上の最小帯域幅
*遅延=経路上の遅延合計÷10
*デフォルトでは負荷と信頼性を使用しない
VLSM(Variable Length Subnet Mask:可変長サブネット)
・サブネットごとに異なる長さのサブネットマスクを使うための技術
・IPアドレスを無駄なく使えるようになる
VLSMと経路集約をサポートしているルーティングプロトコル
・RIPv2
・OSPF
・EIGRP
EIGRPの特徴
・複合メトリックを使う
・ルーティングアルゴリズムは「DUAL」を使用
・不等コストロードバランシングをサポートする
EIGRPのサクセサの特徴
・サクセサをネクストホップとする経路をルーティングテーブルに載せる
・宛先ネットワークから自身までのすべてのネイバ経由のFDを算出し、最も小さいFDになるネイバをサクセサとする
EIGRPのフィージブルサクセサの特徴
・サクセサのFDより小さいRDを持つ
・サクセサがダウンした場合、速やかにバックアップルートを提供する
BGP
経路情報を交換するルーティングプロトコルであるBGPにはiBGPとeBGPの2種類がある
・iBGP(Internal BGP):同一のASのネイバとの経路情報交換に使うBGP
直接接続していなくてもよい。AD値は200
・eBGP(External BGP):異なるASのネイバとの経路情報交換に使うBGP
直接接続している必要がある。AD値は20
AS(Autonomous System:自律システム)
・各組織が保有・運用する自律したネットワークのこと
・AS内ではIGP(RIP、OSPF、EIGRPなど)が使用される
・AS間ではEGP(BGPなど)が使用される
AS番号(Autonomous System Number:自律システム番号)
・ASには16bitの番号(最大65535)が割り当てられる
・AS番号は以下の2つの範囲に分けられる
1~64511:グローバルAS(インターネットで使用するAS番号。パブリックASとも呼ばれる)
64512~65535:プラベートAS(組織内でのみ使用できるAS番号)
IGPとEGP
・IGP(Interior Gateway Protocol)はAS内の経路情報を交換するルーティングプロトコル
・EGP(Exterior Gateway Protocol)はAS間の経路情報を交換するルーティングプロトコル
クラスフルルーティングプロトコル
・ルーティングアップデートにサブネットマスク情報を含めない
・VLSMや不連続サブネットをサポートできない
・RIPv1、IGRPなどがある
クラスレスルーティングプロトコル
・ルーティングアップデートにサブネットマスク情報を含める
・VLSMや不連続サブネットをサポートする
・RIPv2、OSPF、EIGRP
ロードバランシング
・トラフィックを複数の経路で分散して転送する
・動的ルーティング環境では特に設定をしなくても有効になる
ゲートウェイ
異なるネットワークを接続する機器(ルータやL3スイッチ)
デフォルトゲートウェイ
・スイッチで設定を行う
・未知のネットワークにパケットを送信する際はデフォルトゲートウェイにパケットを送信する
デフォルトルート
・ルータで設定を行う
・受信したパケットの宛先がルーティングテーブルに載っていない場合はデフォルトルートに向けてパケットを転送する
スタティックルーティング
スタティックルーティングの特徴
・ルーティングテーブルを手動で作成
・ルータへの負荷が少ない
・帯域を消費しない
・機器ごとに設定が必要なため、ネットワーク管理者の負荷がかかる
・管理者の思い通りの経路設定が可能
・障害時などの経路変更に即座に対応できない
スタティックルーティングの設定
Router(config)#ip route {宛先} {転送先} [AD値] [permanent]
{宛先}の指定方法
・ホストルート
ホストルートとは、そのアドレスを持つホストへの経路
宛先アドレスにホストアドレスを指定し、サブネットに「255.255.255.255」を使用する
例:(config)#ip route 192.168.1.1 255.255.255.255 10.1.1.1
・ネットワークルート
ネットワークルートとは、そのネットワークへの経路
宛先アドレスにネットワークアドレスを指定し、サブネットに「255.255.255.0」などを使用する
例:(config)#ip route 192.168.1.0 255.255.255.0 10.1.1.1
・デフォルトルート
デフォルトルートとは、未知のネットワークにパケットを転送する際に使用する経路
宛先アドレスに「0.0.0.0」を指定し、サブネットに「0.0.0.0」を使用する
例:(config)#ip route 0.0.0.0 0.0.0.0 10.1.1.1
{転送先}の指定方法
・直接接続スタティックルート
転送先に「出力インターフェース」のみを指定する方法
宛先ネットワークに到達するための出口となる
インターフェースが1つしかないポイントツーポイントのような場合に使用する
インターフェースがダウンしている場合は有効な経路にはならない(ルーティングテーブルに載らない)
例:(config)#ip route 192 168 1.0 255.255.255.0 Serial 1/1
・再帰スタティックルート
転送先に「ネクストホップアドレス」のみを指定する方法
ネクストホップ向けの出力インターフェースはルーティングテーブルをもとに解決する
ネクストホップが解決されない場合は有効な経路にはならない
例:(config)#ip route 192 168 1.0 255.255.255.0 10.1.1.1
・完全指定スタティックルート
転送先に「出力インターフェースとネクストホップアドレス」の両方を指定する方法
出力インターフェースがEthernetのようなマルチアクセスでネクストホップを明示的に指定する必要がある場合に使用する
直接接続スタティックルートと同様に、指定したインターフェースがダウンしている場合、有効な経路にはならない
例:(config)#ip route 192 168 1.0 255.255.255.0 Serial 1/1 10.1.1.1
ダイナミックルーティング
ダイナミックルーティングの特徴
・RIP、OSPF、EIGRPなどのルーティングプロトコルを使用して、ルーティングテーブルを自動で作成
・ルータへ負荷がかかる
・ルーティング情報を交換するために帯域を消費する
・各機器が自律動作するので、ネットワーク管理者の負荷が少ない
・障害時などの経路変更があった場合でも自動的に更新される
・大規模ネットワークに適している
ダイナミックルーティングの設定
(config)#router {ルーティングプロトコル}
(config-router)#network {アドレス} {ワイルドカードマスク}
{ルーティングプロトコル}
有効にしたいルーティングプロトコルを指定
「rip」や「ospf」や「eigrp」など
{アドレス}
ダイナミックルーティングを有効にしたいインターフェースの「ネットワークアドレス」または「IPアドレス」を指定
{ワイルドカードマスク}
アドレスを読み取るためのワイルドカードマスクを指定
サブネットマスクを入力した場合、自動的にワイルドカードマスクに変換して処理をする
ダイナミックルーティングの種類
・ディスタンスベクタ型
ルーティングプロトコル:RIP、RIPv2
ルータへの負荷:小さい
帯域消費量:多い
収束速度:遅い
メトリック:ホップ数(宛先までのルータの数)
AD値:120
定期的なルーティングアップデートを行う
隣接ルータから受け取ったルーティングアップデート情報をもとにルーティングテーブルを更新する
・リンクステート型
ルーティングプロトコル:OSPF
ルータへの負荷:大きい
帯域消費量:少ない
収束速度:速い
メトリック:コスト(帯域幅)
AD値:110
・拡張ディスタンスベクタ型(別名:ハイブリッド型)
ルーティングプロトコル:EIGRP
ルータへの負荷:小さい
帯域消費量:少ない
収束速度:速い
メトリック:複合メトリック(帯域幅や遅延など)
AD値:90
フローティングスタティック
・ダイナミックルーティングで経路情報が得られなくなった時だけスタティックルートを有効にする手法
・ダイナミックルーティングのアドミニストレーティブディスタンス(AD)値より高いAD値をスタティックルートに設定
例:(config)#ip route 192.168.1.0 255.255.255.0 10.1.1.1 130
TTL
TTL(Time to live)
・パケットの生存時間(パケットが何台のルータを経由できるかの数値)
・ルータは受信したパケットのTTLを1減らして転送する
・TTLが0になったパケットは破棄される
・TTLがあることによって、ルーティングループ発生時に永遠にパケットが転送され続けることを防ぐことができる